不可解なこの事件に関心を寄せる人は多い
ここ最近、中国人と話をすると、よくこの事件の話になります。
北海道で、中国人女性教師の危秋潔(危秋洁)さんが失踪してしまったという事件。
日本は安全だと思い、一人旅に来た中国人女性が、
もし日本で何らかの事件に巻き込まれてしまったとしたら、今後日本にくる中国人旅行客への影響も間違いなくあるでしょう。
最近、神奈川県で中国人姉妹が殺されてしまった事件があっただけに、日本は危険なんじゃないかという心配はさらに高まってきています。
わたしも日本人として、中国に深い関心を寄せる者として、同じ旅好きとして、そして女性として、
この事件にはかなり関心を寄せていて、毎日進展をチェックしています。
ちょっとここで事件のあらましや疑問点などを、まとめてみたいと思います。
まずは現在までに報道されている内容
(本来は友人と2人で日本に来るつもりだったが、友人に急に用事ができ、一人旅に。友人はツアー旅行に参加することを勧めたが、色々と下調べをしたので一人で大丈夫と答え、一人で来日。)
【7月18日】 中国・天津から函館へと飛行機で入る。本来は25日に帰国予定
【22日朝】 札幌のゲストハウスに荷物を残し、外出する。荷物は「街に買いものに行く程度」でかなり軽装。宿泊料金は24日宿泊分まで前払い済。中国に残してきた自作の行程表では、このまま札幌に宿泊し、日帰りで富良野など近くの観光地に行く予定だった
【22日午後4時頃】 釧路市内の防犯カメラに危さんの姿が映る
【22日午後5時半】 危さんの携帯電話から父親に、ウィーチャット(中国のLINE)で「今宿に帰っている」というメッセージのやりとり
【22日午後7時半】 一人で阿寒湖温泉街のホテルにチェックイン(事前予約はなかった。防犯カメラ映像で本人と確認されている)
【23日午前7時半】 一人でチェックアウト
【23日午前8時】 阿寒湖遊覧船に一人で乗船・下船する姿を目撃される
【23日午前10時頃】 阿寒湖近くのコンビニの防犯カメラに映る(父親により本人と確認済み)&近くの有名パン屋でパンを買うところを目撃される
【25日夜】 阿寒湖周辺で、黒い服を来た危さんとみられる女性が一人で歩いていたと目撃情報あり
【31日午後1時半頃】 阿寒湖北側の林道で、白い服を来た危さんとみられる女性の目撃情報あり
時間など、日本のニュースも中国のニュースも細かいところが異なったりしているのですが、一応このような流れになるかと思います。(8月1日17時時点)
もうほんと、名探偵にでもお出まし願いたいような不可解な足取りです。
一番最新だと、昨日7/31にも彼女の目撃情報がありました。
しかし、人による目撃情報だけだと、人違いということもありますもんね…。
ちなみに、昨日目撃した人は、ぜひその女性に声をかけてほしかったと思いましたが、詳細ニュースを見ると、川の対岸に後ろ向きで立っていたとのことで、声をかけられるような状況ではなかったのかもしれませんね…(北海道ニュースUHB 8/1の記事による。ヤフーニュースから読めます →https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170801-00000005-hokkaibunv-hok)
今のところ、23日の午前中に、阿寒湖そばのコンビニの防犯カメラに写っていた彼女の姿が、最後の確定情報なのではないでしょうか。
彼女に何が起こったのか
なんとか無事でいてほしい、というのが心からの願いですが、彼女に何が起こったのか、考えられる可能性を挙げてみると…
1)自らの意思で帰国予定の25日に中国に戻らず、どこかに隠れている。
2)何者か(日本人or中国人)に脅され、拉致をされている。もしかしたら殺されてしまったかもしれない。
3)自ら命をたってしまった。
4)交通事故または野生動物に襲われてしまった。
何者かに誘拐されたか?それとも一人なのか?
というのは、この事件の最大の争点と言えるかもしれません。
一人で行動してるんじゃないかと思われる理由
これまで目撃・防犯カメラに写っていた映像はすべて一人です。
阿寒湖に行く際には誰かの車に乗って行ったんじゃないかという推測もありましたが、最新情報によると、22日に札幌からJRに乗って釧路まで移動したことが分かり、釧路で阿寒湖までの行き方を訊ねているようです。
釧路での防犯カメラ映像でも一人、そして阿寒湖のホテルにチェックイン、チェックアウトしたときも一人でいたようです。
もちろん、防犯カメラに映っていない、気づかれなかっただけで近くに誰か同行者がいた可能性もあります。
また、22日夕方、彼女は明らかに当初の旅行計画とは異なる場所(釧路、阿寒湖)に向かっていましたが、父親とのウィーチャットのやりとりでは、「宿に無事に向かっている」と言いました。
故意に、嘘をついたのでしょうか。
もちろん、誰かに脅されて送らされた、または彼女の携帯を使って別の誰かが送った可能性も否定できません。
誘拐犯がいるという推測
やはり他の誰かが彼女のそばにいたのか?脅されていたのか?という疑問は常に付きまといます。
なぜなら、そうでもしないと彼女の行動が理解できないからです。
小学校教師というしっかりした職業についていたことから、彼女には計画的に動いたり安全に気を配る賢さ、そして責任感があるという推測ができます。
ではなぜ、突然予定を変えて阿寒湖に行ったのか?
当初の予定であった富良野は今ラベンダーが最盛期で最も良い季節だそうですが、それにも関わらずです。
そしてそれは百歩譲って納得したとしても、
自らの意思で中国に帰る飛行機に乗らず、不法滞在という形で日本に居続ける、というのが彼女自身の意思によるものだと、多くの人は信じられないのです。
やはり、誰かに脅されたり拉致されていたり、最悪の場合もう殺されているのでは…という推測もなされています。
または、私の知り合いの中国人は、彼女は確かに一人だが、何かショッキングな出来事があって、精神に異常をきたしてしまったのではないか?と言っていました。
確かにそうとしか説明できない気もします。
書き残したメモの存在
ここで一つ、彼女が一人で行動している場合、何を望んでいるのかという議論に拍車をかける手掛かりがあります。
それは家族・友達に宛てて書かれたというメモ。彼女が持っていた村上春樹の本の冒頭に挟んであったそう。22日まで滞在し荷物を残していた札幌のゲストハウスで、彼女のスーツケースの中から見つかりました。
このメモ内容がきちんと公開されていないので、様々な憶測を呼んでいます。
中国語で書かれているそうですが、どのようにも取れる、ということなのでしょうか。
ただ確実なのは、家族や友達に対する感謝が書かれているということ。
あとは、別れを告げる内容が書かれているそうですが、これが曲者…
A)この世に別れを告げるものなのか、
B) これまでの生活に別れを告げるものなのか、
C) これまでの自分に抽象的な別れを告げるものなのか
自殺の可能性?
Aならば、自殺説につながります。私も一時、彼女は自殺するために阿寒湖へ向かったのでは、などと考えたりもしました。
というのも、中国で大ヒットした2008年の映画「非诚勿扰」(邦題:狙った恋の落とし方)が頭をよぎったのです。北海道への中国人旅行客が増加した理由のひとつになったこの映画は、北海道の自然の素晴らしさや人のあったかさを伝えています。
しかし、ストーリーはなかなかハードで、ヒロインは不倫の恋の苦しさから北海道で自殺を図ろうとするのです。まぁ主人公に助けられ、未遂に終わるのですが。確か船の上から海に飛び込むんでした。
今回の事件、来日した危さんの父親の証言のなかに、「最近娘が彼氏と別れた」というものもありました。もしや…と少し頭をよぎってしまいました。
しかし、危さんは阿寒湖の遊覧船を降りたあと、有名な美味しいパン屋さんでパンを買う姿が目撃されています。自殺説はやはり可能性は低いと思います。
また、残されたメモは公開されていないものの、内容を知る人の証言として、「それは遺書とかこの世に別れを告げるニュアンスのものではない」と否定がされています。
また、危さんは9月より正式な教師としての職を手にしたところ。そんななかで自殺などあり得ないという意見も多くありました。
自ら不法滞在を図った?
次にB「これまでの生活に別れを告げた内容」だったのではないかという説。これは中国のニュースを受けて、日本の2ちゃんねるなどで炎上したそうです。
そのニュースとは、澎湃新闻 7/30の記事で「日本で行方不明の女性教師がお別れの手紙を残す~新しい生活を始めます」というもの。(原文URL:https://view.inews.qq.com/a/2017073000356300 ←これは中国のサイトです。念のため安全か確かめてから飛んでくださいね~私が開いたときは大丈夫だったのですが)
この記事の中に、以下のような内容がありました。意味をざっと訳しますと、
「危秋潔の友人が澎湃新聞に対し語ったところによると、危秋潔の残した手紙のおおまかな内容は、両親への長年育ててくれたことへの感謝、また自分の過去の生活にあまり満足しておらず新しい生活を始めるつもりだということ、そしてお別れの言葉だった。
しかし、手紙の内容に対して、この友人は付け加えて言った。以前に連絡を取ったとき、彼女がこのような考えを持っている兆候は見られなかった、と。」
この部分を受けて、一部のネットユーザーからは「危さんは日本で新しい生活を始めたいと思って自ら姿を消し、このまま日本に不法滞在する気では?」という意見も上がっています。
しかし、このような内容の報道をしているのは、中国の新聞だけ。しかもこの新聞は、大手マスコミというよりは、数あるインターネットニュース会社のひとつという感じです。
さらには、「危秋潔の友人」が、なぜ公開されていないメモの内容を知っているのか気になります。
中国には、危さんの弟が残っているようで、彼は日本にいる危さんのお父さんからたびたび状況報告を受けて、中国のメディアに語っています。彼ならメモの内容を知っていてもおかしくありませんが…
ちなみに、危さんの弟は、このメモは単なる旅行日記だと答えているようです。
このメモに大きな意味はない?
最後に、C「これまでの自分に抽象的な別れを告げる内容だった」という推測もできます。この場合は、このメモをあまり重視する必要はなさそうです。
つまり、これまでの自分の生活を振り返り、新たなステージを頑張っていこう(もちろん日本での新しい生活ではなく、中国で新しい自分を生きていこうという意味)などと、抽象的な思考は、一人旅をしていると起こりうるものですし、
村上春樹を読んでいるあたりも、なんとなくそのようなロマンチックというか感傷的な気持ちに合致しているような…。自分の新たな決意を書き留めておいただけではないでしょうか。
しかし、このメモの内容が公開されない限り、全ては推測でしかありません…。
捜査には中国側の協力が不可欠
この事件の解決に向けて、中国と連携をとりながら日本の警察は捜査を進めていく必要があると私は思います。
彼女に同行者がいたのか?という手掛かりは、ウェイシンのやりとりにあるかもしれません。
彼女の失踪に関わった人物が、中国人である可能性は十分にあります。同じ中国人ならば彼女も安心して気を許すかもしれないからです。その場合は、彼女がその人物と出会ってから、ウェイシンの連絡先を交換するのはごく自然です。
彼女が北海道に来てから友達追加となった人物がいるかどうか、ウェイシンの会社(テンセント)なら追跡できるかもしれません。
もちろん彼女がLINEを使っていたならば、LINEも調べねばなりません。
または、中国人が日本に旅行に来る際、日本で留学や仕事をしている中国人を個人ガイドとして雇うことがあるそうです。インターネットでそのような人はいくらでも見つかります。
また、彼女が参考にしていた北海道攻略ガイドのサイトがあれば、それも彼女の足取りの手がかりになるかもしれません。
いずれにしてもすべて中国のサイトなので、中国人の目線を捜査に取り入れ、中国の会社がもつ情報を取り寄せ、北海道に住む中国人に事情を聴くなどしていかねばならないと思います。
もちろん、日本人への捜査、周辺の捜索は続けながらですが。
彼女の失踪に日本人が関わった可能性も依然としてあります。
記事が大変長くなりました…。
ただ、彼女が無事に見つかりますように。今後も事態を見守りたいと思います。